
栗本薫原作の127巻を超える長編小説をアニメ化したヒロイックファンタジー『グイン・サーガ』。
このギネス級超大作が、最高のアニメ制作スタッフを揃えて、現在NHK BS2にて好評放送中だ。放送も第15話を迎え、物語はいよいよ後半戦に突入した。
7月5日(日)、NHKふれあいホールにて、この『グイン・サーガ』のステージイベントが行われた。今回はその模様をレポートしよう。
暗闇のなか、グイン、レムス、イシュトヴァーンの声が会場内に響き渡り、臨場感が漂う中『グイン・サーガ』オープニングが流れた。その後、グイン役の堀内賢雄さん、レムス役の代永翼さん、イシュトヴァーン役の浅沼晋太郎さんがそれぞれのキャラクターの紹介と共に登場した。
――一言ずつお願いします。


堀内賢雄さん(以下 堀内):グイン役の堀内です。今日は豹の頭を付けてこようかと思ったんですが、それでは失礼かなと思いましてやめました(笑)。今日は楽しんでいってください。私は本日は堀内賢雄ではありません。グインです!
代永翼さん(以下 代永):レムス役の代永です。今日は生でイラッとさせていこうと思います(笑)。最後まで楽しんでいってください。
浅沼晋太郎さん(以下 浅沼):イシュトヴァーン役の浅沼です。今日は生でモヤッとさせていこうと思います(笑)。よろしくお願いします!
――この『グイン・サーガ』、原作となったのは栗本薫先生が書いた現在127巻まで刊行されている長編小説がもととなっています。生誕30周年ということでTVアニメ化されました。非常にアニメ業界では、アニメ化、映像化するのは難しいと言われていた作品を今回お集りの豪華キャスト陣、そして、若林監督をはじめとする強力なスタッフで初めて映像化されました。一話一話が非常に内容がぎっしりと詰まっております。
今日はそれらを振り返ってまいりたいんですが、全部振り返るとさすがに帰れなくなりましたので、部分的に紹介いたします。事前にキャストの皆さんにアンケートを取っていますので、それをもとに紹介してまいります。

「キャストが選ぶ名(迷)場面集」コーナー。まずキャスト陣のコメントを紹介し、その場面を流して、それについて語るというコーナーだ。
第1話「豹頭の仮面」より、グインが寝ているシーンからはじまる。グインが初めて双子と出会う。
(キャストコメント1)
このシーンが私にとっての初めてのグインとの出会いです。栗本先生、若林監督の『グイン・サーガ』でキャラクターに魂を吹き込んだ瞬間であるから。(堀内さん)
(キャストコメント2)
『グイン・サーガ』というタイトル通りにすごく迫力があって、神秘的でこいつはいったい何者なんだろう? と思わず鳥肌が立ってしまいました。(代永さん)
堀内:このグインはオーディションでつかみとった役なんです。実は、僕は「なのだぞ」というセリフが言いにくくて、何回もトチりまして。(そのオーディションのときに)「今回はだめだろうな」と思ったんですが、栗本先生の作品だし、とにかく受かりたかったんです。そしたら合格しまして!(そういう経緯もあったので)この(初めのシーンの)瞬間に、そのグインというキャラクターに魂を吹き込むことができたんです。グインが寝ているときもいびきも入れたんですが、そこはカットされていましたね(笑)。そういう意味でもこの瞬間のシーンがうれしかったですね。収録の前にテストを行うんですが、そのときは僕は鳥肌が4800粒立ちました(笑)。それくらい緊張していたのを覚えています。強烈でした。
代永:リンダとレムスという双子も登場するんですが、このグインの登場のしかたがやっぱり印象がすごく大きくて、音楽も聴いていたとおりすごくミステリアスで、グインは敵なのか味方なのかというのが僕ら(双子)にとってはわからないほどだったんです。そういう部分でもすごく印象が強くて、グインと目が合ったときも「こいつ、絶対だれか殺すぞ」という、「もしかしたら双子が殺されるんじゃないか」というくらい印象が強かったので、本当にこの場面はグインが生まれたというか、誕生した瞬間で僕の中でも印象的なシーンでした。
第8話「狼王との出会い」より、グインが砂漠狼に囲まれところを、狼王により救われ、道案内を受けて、別れるシーンまで。
(キャストコメント)
まさしく偉大なものだけが知る出会いと別れのシーンであるから。(堀内さん)
堀内:これも僕が選びました。このシーンは偉大なもの二人が出会ったシーンで、砂漠狼にグインが襲われたときに、グインとしてはピンチだったんです。そのときにその雄たけびとともに狼王が現れてグインを助けてくれたんです。それがすごく切なさがあったり、哀愁があったんです。
浅沼:僕もそういう目線もありつつ、かわいいワンコとニャンコのシーンだなぁと思って観てました(笑)。
第10話「辺境の王者」より、アストリアスがアムネリスの飛んできた髪の毛をつかんで匂いを嗅ぐシーン。
(キャストコメント)本当に純粋なんだけど、ちょっと行動が行き過ぎていて、気持ち悪いなあと思わず思ってしまいました。(代永さん)
代永:これはキャストを代表して僕が選ばさせていただきました。
浅沼:ちなみにもっと後の回なんですけど、その髪の毛を大事にペンダントに入れてあるシーンがあるんですよ。そこでもさらに嗅ぐという、そんなに香りが残っているなんて、アムネリスはどんなシャンプーを使っているんだろうと思いましたね(笑)。
第9話「ラゴンの虜囚」より、マルスが焼かれるところをイシュトヴァーンが悲しく見送るシーン。
(キャストコメント)アフレコ現場でそれまでは「レムスがイラッとする」「アストリアスが気持ち悪い」と持ちきりだったのに、この回は「イシュトヴァーンひどい!」の大合唱。ふと旅に出たくなりました。(浅沼さん)
浅沼:これは、「イシュトヴァーン、ひでえ、ひでえ」と言われましたね。でも本当に考えたのはグインなんですよね、「こうやれ」って。
――作戦であったんですよね。相手側のほうでスパイに入れって。
浅沼:「おまえにしかできない」ってグインに言われて、ああいう悲しい結果になってしまったんですけど、誰もグインのことを責めないんですよ。
堀内:でもイシュトヴァーンは結構器用なんですよね。そういうスパイみたいなことができてしまう。
浅沼:グインが「イシュトヴァーンにしかできない」って言うんですけど、確かにグインがどんなカツラをかぶろうとしても、顔が猫ちゃんですからね(笑)。

第12話「新たなる運命」よりアムネリスがナリスの顔を見たシーン。
(キャストコメント)あんなに勇ましくて気高いお姉さまがホロリと乙女に。何だよ、結局顔か! 顔なんだな! ふと旅に出たくなりました。(浅沼さん)
浅沼:(アムネリスがナリスに向かって)「美しい」と3回ときめいていましたからね。しかも頬も赤らめて。そういうことなんですか? 女性の皆さん。タイプとか聞くと「私、外見は関係ないから」とか言いますけど、嘘だろ!(会場:笑)
――これは前々回の放送ですね。第12話なので。非常に仮面舞踏会の衣装がすごかったですね。ここでようやくナリスが出てきたわけですけど、ナリスといえば、この方ですよね。

突然、会場内にナリスの声が響き渡った。「これはこれは、美しい、美しい、美しい、美しい方がお揃いで……」
ここでナリス役の内田夕夜さんが登場。ナリスの登場が遅れてきたのと同様の演出で内田さんも遅れて登場。
――ちょうど物語でいうと、折り返し地点にきて、先週では海賊船に乗って向かったシーンになりますが。
内田:僕が演じるナリスは、まだグインと絡むシーンがないので、この先グインと絡むシーンがあればきっと緊張と興奮で鳥肌が4800個出てくると思うんですよ(笑)。
――甘いセリフがいいですね。
内田:そうですね。かなり恥ずかしいものもあるんですけど。
堀内:僕、家では結構ナリスのセリフを練習していますよ。(会場:爆笑)
内田:僕も家でグインの叫びを練習していますよ(笑)。

キャストが揃ったところでコーナーも変わり、生アフレコのコーナーに移った。
ご自身の役以外のところはコメントが入っていて、それ以外のものはすべてここで生アフレコをやることに。
第5話「宿命の出会い」より、グインとレムスとリンダが一緒に歩いているシーンの一部アフレコ。レムスのマイナス思考とリンダの凛としたやりとりをみていたグインが2人をなだめるシーン。
――ここでレムスの名セリフが出てきましたね。
代永:そうですね。「僕歩けない」「僕死にたくない」「僕を馬鹿にしているんだね」全部マイナスなセリフです。
浅沼:ひっぱたきたくなる。(会場:笑)
代永:僕自身もイラッとしてました(笑)。

続いて、第12話「新たなる運命」より、レムスが何か自分の宿命的なものに気付く場面のアフレコ。気弱なレムスがだんだんと自信を帯びてくるシーン。
浅沼:代永くんの本来のブラックな姿が出てきましたね。
代永:とてもやりやすかったですね。やっと黒くなりました(笑)。
――先週放送されたところでも、レムスは強気で、みんなからビンタされてましたよね。
代永:今まで弱気だったときはそんなにビンタはされてなかったんですけど、生意気になった途端にビンタされるようになったんです。
浅沼:どっちにしろ(レムスは)誰かにとって気に食わない(笑)。
代永:弟がせっかくしっかりしたにも関わらず、それが気に食わなくてビンタですよ。「もっとしっかりしなさい」って言ってたのは(姉の)リンダだったのに。
第11話「戦士たち」より一部アフレコ。ナリスが馬車の中でモンゴールからクリスタルを取り戻す決意をするシーン。
――内田さんはナリスにどのような気持ちを込めていらっしゃるんですか。
内田:普通に。ナリスはとても美しい人ですけど、でも、人なので。結果的に美しかったということだけなので、美しい声を出そうとか、人を誘惑しようという感じではやらないですね。
――堀内さんは、ナリスの登場についてはどのような印象を受けましたか。
堀内:いわゆるジェラシーですね(笑)。夕夜くんは、確かに本人がおっしゃった通り、あまり作らないですよね。夕夜くんが持っている人間性というものをうまく出している。あざとくやっちゃうと、どうしても演技がくさくなっちゃうから。そういった意味で皆さんは地の部分を出しながら、うまくやっているなと思いました。

第15話「再会」より、イシュトヴァーンがリンダと一緒に見張りをしているシーンをアフレコ。まだ放送されていないということと、リンダと二人きりのシーンということで、貴重なアフレコだった。
―― 一番長かったですね。2分50秒! イシュトヴァーンとリンダは、ああいうことになっちゃうんですね。
浅沼:僕らしくもないラブロマンスを……。しかも放送がまだなのに一足先に生アフレコなんて!
堀内:リンダは、グインが好きだったんじゃなかったの?(会場:笑)
内田:リンダは、ナリスが好きじゃなかったんですか?(会場:笑)
代永:みんな、取り合わないでください(笑)。

第1話「豹頭の仮面」より、グインと双子がたいまつを持って戦うシーンをアフレコ。グインの「子供たちよ、戦え」というセリフが印象的なシーン。
――なんといってもここはグインですよね!
堀内:この頃はまだ双子たちを「子供たち」と言ってたんです。「子供たちよ」これが結構好きな台詞だったんです。
――堀内さんが演じられる中でも久々に正義の……
堀内:「久々」って失礼だな!(会場:笑)
――グインに襲われてるかと思いました!(笑)
堀内:僕が子供のとき、グインみたいに、「とにかく前へ進めば解決策が見えてくる」っていう大人が結構いたんですよ。そこにすごく懐かしさを感じます。かっこいいですよね。とにかく逃げないじゃないですか。
――みんなの期待に応えていますもんね。やっぱり現場でも堀内さんがリーダーで?
内田:そうですね、やっぱり座長ですね。スタジオでもセンターに賢さんが座っていらして、この収録のレギュラーやゲストキャストに対して必ず一言声をかけてくださって、その場の雰囲気作りをしてくれるんです。そういう意味でもまさに「グイン」だなと思いますね。
堀内:ありがとうございます。

この後、コーナーはオリジナル会話劇に移る。これまで放送された『グイン・サーガ』の台詞のなかで印象に残る言葉をピックアップし、それらを組み合わせて使って、新たな会話劇をやるというコーナー。しかも、さらに会場のお客様も参加する形式だ。お客様が一番共感したキャラクターに拍手をし、拍手が多かったその役者が勝者となる。

(ピックアップされた台詞一部抜粋)
イシュトヴァーン(浅沼):「俺の名はイシュトヴァーン、またの名を紅の傭兵だ」「やれやれだぜ」「それは結構なご提案だぜ」「じゃ、決まりだな」「わかったよ、やりゃいいんだろう、やりゃ」「やれやれ、人気者はつらいぜ」
ナリス(内田):「ぜひとも出席させていただこう」「かわいそうに。あなたは本当に何も知ってさえおらぬのだ」「これはお美しい。こちらにおいでなさい、かわいい人」「怖がる必要はありません」「美しい人は美しく装うべきです」「落ち着きなさい」「あなたはもう私の思いのままだ」
レムス(代永):「そんなのできるわけないよ~!」「なんでそんなことわかるのさ!?」「ねえ、リンダはどこなの?」「リンダ~!」「誰も見てくれない、僕のことなど、誰も」「僕を馬鹿にしてるんだね?」
グイン(堀内):「いや、勝ち目はある」「俺は決して失敗はしない」「後戻りが出来ない以上、前進するほかないということだ」「俺はグイン! どこからきたか、生まれも知らない戦士だ!」「いいか、お前はお前なのだぞ」
以上のそれぞれのキャラクターの名台詞を組み合わせ絶妙な会話劇が繰り広げられ、役者陣それぞれがキャラクターをアピールした。
審査の結果、ナリスが勝者となった。
「優勝はパロ聖王家に生まれた者の義務だ」とナリスの勝利の一言でコーナーが締めくくられた。

そしてキャスト陣は一旦退場。
歌手のカノンさんがスクリーン後ろから登場し、エンディング曲「Saga~This is my road」を幻想的に歌い上げた。観客もその歌声に聞き入り、光り輝くステージに見入っていた。
その後、プレゼントコーナーに移り、4人のキャストのサイン入りポスターをくじ引きによってプレゼントすることに。当選者は壇上にあがり、ポスターを受け取ってそれぞれのキャスト陣に握手をしてもらった。

――最後に一言お願いします。
内田:僕らはスタジオで仕事をしていて、なかなか皆さんとお会いすることが少ないんですけど、今日、こういったイベントでこの時間を過ごさせていただいて、本当に支えられているのだなと、強く感じました。今日ここで感じたことも含めて、これからのアフレコに臨みたいと思います。本当にどうもありがとうございました。
浅沼:今日は緊張していたんですけども、皆さんが温かく迎えてくれたので、本当にうれしかったです。ステージに立っていながら楽しく過ごさせていただきました。この後も『グイン・サーガ』はまだまだ続きますので、見逃さないでください。ありがとうございました!
代永:本当に驚いたのが、これだけ多くの方が『グイン・サーガ』を見てくださっていて、読んでくださっていて、愛してくださっているので、とても僕ら役者陣にとってもうれしいことだったので、このことを忘れずに最終回まで、皆さんにいい作品を届けられるように頑張りたいと思います。これから先も『グイン・サーガ』を愛し続けていってほしいなと思います。そしてレムスがどんどん黒くなっていきます……楽しみにしていてください(笑)。
堀内:声優、役者になって30年くらいになりますが、今回の『グイン・サーガ』ほど監督を含めスタッフや視聴者の皆さんの情熱が伝わってくる作品っていうのはなかなか巡り会えるものではないと、そういうふうに感じています。いろんな想いで皆さんの真剣な想いが役者にも伝わってきます。役者も一生懸命台詞を言って皆さんの心に届くような演技をしたいと努力しますので、皆さん、その応援をよろしくお願いいたします。僕も久々のヒーローなんで(笑)、一生懸命頑張りたいと思います。
――ありがとうございました!
和やかな雰囲気と拍手の中イベントは終了した。
折り返し地点にきた『グイン・サーガ』、ナリスの登場とレムスの変貌もあり、今後もますます目が離せない!
【放送情報】
TVアニメ『グイン・サーガ』
NHK BS2にて毎週日曜 夜23:29より放送中!
【STORY】
いまだ科学より魔道の力が信じられる時代、
キレノア大陸で最も古い歴史と伝統を誇る皇国パロが中原の華と呼ばれていた頃。
突如その王宮クリスタルパレスに隣国モンゴール軍が侵攻。戦火の中、パロ皇帝アルドロス三世と妃は殺害されてしまう。
残された子でありパロの王位継承者である双子のリンダとレムスは謎の空間転移装置「古代機械」により脱出を試みるが、
誤って魔物の棲む未開の森「ルード」に送られてしまう。
その森で二人が出会ったのはなぜか豹の頭をもつ謎の戦士グインであった。グインは二人をモンゴールの追手から救った
が、彼はなぜか「グイン」「アウラ」という言葉以外、自分が何者か全ての記憶を失っているのであった……。
【STAFF】
原作:栗本薫 「グイン・サーガ」(早川書房刊)
監督 : 若林厚史
シリーズ構成・脚本 : 米村正二
キャラクター原案 : 皇 なつき
キャラクターデザイン・総作画監督 : 村田峻治
コンセプトデザイン : 大河広行
色彩設計 : 甲斐けいこ / 篠原 愛子
美術監督 : 東 潤一 / 平柳 悟
美術設定 : 松本浩樹 / 高橋武之
美術背景 : スタジオ・イースター
撮影監督 : 久保田 淳
編集 : 岡 祐司
助監督 : ヤマトナオミチ
音響監督 : 明田川 進
音楽 : 植松伸夫
アニメーション制作 : サテライト
制作 : Project Guin
【CAST】
グイン:堀内賢雄
リンダ:中原麻衣
レムス:代永 翼
イシュトヴァーン:浅沼晋太郎
スニ:矢作紗友里
ナリス:内田夕夜
アムネリス:渡辺明乃
アストリアス:石井 真
マリウス:阿部 敦
スカール:岩崎征実
ヴァレリウス:藤原啓治
【関連リンク】
『グイン・サーガ』公式サイト:
http://www.guinsaga.net
『グイン・サーガ』(公式スタッフブログ):
第1巻は栗本薫書き下ろし小説付き!『グイン・サーガ』DVD第1巻、7月22日よりリリース開始!
© 栗本薫/天狼プロダクション/Project Guin