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インタビュー『劇場版〝文学少女〟』はどんな物語になるのか――多田俊介監督に聞く
[02月03日]
2010年5月1日より順次公開される『劇場版 “文学少女”』。
原作シリーズが累計160万部を突破(2010年1月現在)した、古今東西のあらゆる名作文学をモチーフとした青春ミステリー作品で、作品の持つ透明度から、映像化困難と言わしめた作品を、Production I.Gが劇場作品として映像化する。

先行してドラマCDやDVD付特装版に付属する前日譚的OVA『"文学少女"  今日のおやつ~はつ恋~』などのメディアミックスがスタートしているが、これらの集大成となる劇場版は、どのような映像と物語を魅せてくれるのだろうか。
本作の監督である多田俊介氏に、お話を伺った。


――最初に原作『“文学少女”』を読んでの印象はいかがでしたか?

多田:映像化がなかなか難しい作品だな、と率直に思いました。まず、劇場版を含めた「”文学少女”プロジェクト」としての形を提示された上での(監督)オファーだったんです。原作の単行本を順に追っていく、という手法が取れない、ということが最初からわかっていたんですよ。その制約の中で「原作の何を抽出すればいいのか」と考えたのがスタートでした。

――原作を映像化する中で難しい、と感じた部分は?

多田:主人公・天野遠子が、原作の前半と結末でキャラクターの見せる表情が変わっているので、その部分をなんとか見せられたら面白いな、と感じました。あと、作品の魅力はあくまで文字なんですね。書かれている文章が作品の存在そのものなので、これを誰かのセリフに出来るのか、などの部分は悩みました。ト書きで説明することは出来ませんが、実際に重要な箇所なので、そこをどう映像にするかが難しいです。モチーフになっている文学作品そのものにフォーカスする、と言うよりは、キャラクターにフォーカスする形でお話を作っています。

――映像化で重要なポイントは?

多田:順番通り追ってしまうと、主人公があまり出てこなくなりますが、劇場版ではばんばん出てきます。

――その主人公とは遠子ですか? それとも心葉?

多田:二人ですね。視点は原作通り心葉が主観を持っている、というところを踏襲しています。ただ、物語の帰結としてはあくまで遠子と心葉が主人公というラインで話を作っています。

――原作の繊細な絵柄を映像にする際に、単純にイラストを映像にするには難しいところもあると思いますが。

多田:イラストをそのまま再現して、いわゆる「イメージで魅せる」というよりは、キャラクターに歩み寄っているので、「息遣いや空気感が出る」方向です。
この作品は、読者の方々が挿絵から想像していることがいろいろと違うんだ、ということを、スタッフをはじめ、友人知人にリサーチして感じたんです。誰もが自分の主観で想像できるあやふやなイメージを提示するという手法もあったんですが、今回のコンセプトである「キャラクターにフォーカス」することができなくなってしまうんです。綺麗さや物悲しさで絵を捉えると、こちらが明確に見せたい結論が見えなくなってしまう。その部分についてはある意味はっきりとした映像で作っていく、という方向性で作画されています。

――劇場版のイメージはオリジナルアニメーション『"文学少女"  今日のおやつ~はつ恋~』の映像と同じイメージになるのでしょうか?

多田:ほぼそうですね。ただ、劇場版は全くアプローチが違うんです。誰かの物語、というところを前面に出したわけではなく、主人公たちの文芸部での学校生活の象徴的な部分を切り取っています。手法は似ているかもしれませんが、見え方はずいぶんと違うものになると思います。

――アニメーションとして動きを見せる部分と、動きすぎると原作のイメージから離れる部分もあると思います。その調整はどのようにしていますか?

多田:カットごとの調整にはしていないです。大きく言うと、前半と後半で違う、というわけかたですね。アニメーションとして作る以上、動くことに面白みがなければならないと言うか、そこがフィルムの見せ場だったりしますが、それが前後に介在するようだと、「”文学少女”」という原作のテイストにはあわないんです。どちらか片方だけでは作品として面白くない。でもどちらも入れたい、となるとバッサリと組み立てをしたほうがいいのでは、ということで、絵コンテではそれぐらい割り切った流れになっています。

――TVやOVAと映画の演出で違いを感じたところは?

多田:これはもうはっきりしているんですが、映画は情報の羅列では成立しないんですよ。TVシリーズだと、総合的に見れば何かのテーマが語られている、という形をとっても、話によってはテーマと直結しないお話や、あとから(物語を)組み立て直すとこの部分にはまる、ということができるんですが、劇場版ではスタートからゴールをしっかりときちんと設定した作りを明確にしなければいけなくて、そこが原作通りに展開できない、というところに相当な苦労をしました。
先程も言いましたが、エピソードや絵を見ていくと、みなさんの作品観に差があって、それを“共通の結末”として共有出来るストーリーに再構築するところが一番難しかったです。

――制作を担当したProduction I.Gの強みは?

多田:あいまいさを残した表現ではなく、明確に情報をつくりだすと言う意味では、I.Gがもともと持っている手法がとても役に立つと言うか、「キャラクターが面白かったので、あとは受け取る側がご自由に料理してください」というものではなく、ある意味はっきりとした生活感や時代観を明確に伝えるというところが、I.Gの持っている強みだと思います。

――キャスティングについての決め手はありましたか?

多田:遠子については、みなさんの持つ声のイメージの最大公約数を探った感じです。オーディションを行って、3次選考くらいまで行った上で決定しました。他のキャストについても複数の候補がいて、絞り込んでいった感じです。さらに心葉に関しては、原作と同じく、唯一主観を語る人物としてあらわれるので、あらゆるシチュエーションに対応してもらわないといけないんです。これは声のイメージとは別に現場の要求が最も高いキャラクターだったので、心葉のキャスティングに関しては、かなり僕の方からも希望を出させていただきました。

――登場するキャラクターは原作でのエピソードをすべて追えないとなると、出演させるのが難しかったと思いますが。

多田:初見の人が人物関係をわかるように作っていくかどうか、という部分でかなり苦労しました。なにしろ、人気のあるキャラクターが多いので、その子たちをどうやって絡めていくのか、という部分に労力を使いました。

――映画の中で一番の象徴的なシーンはどこになるのでしょうか?

多田:いろいろと散りばめられているんですが…夜ですね。きちんとした夜が描かれているのは劇場版だけなんですよ。その部分だけは「こうしなければ!」と思っていたので。夜の表現には注目して欲しいです。

――最後に、ファンの皆様にメッセージをお願いします。

多田:とにかく、楽しみに待っていてください。原作ファンにも、原作を読んでいない人にも楽しめると思います。原作を知っている人にとっての見せ場もありますし、全てのエピソードは網羅できませんが、お話の中核にはきちんとした結末を作っています。その世界に触れることによって、語りきられていない部分を知りたい、と感じるのではないかと思います。

――ありがとうございました!




【作品情報】
『劇場版“文学少女”』
シネ・リーブル池袋ほかにて2010年5月1日(土)より全国順次ロードショー
公開館
 北海道 ユナイテッド・シネマ札幌
 東京 シネ・リーブル池袋
 愛知 伏見ミリオン座
 大阪 テアトル梅田
 福岡 ユナイテッド・シネマキャナルシティ13

【STAFF】
原作:『“文学少女”シリーズ』 野村美月(エンターブレイン ファミ通文庫刊)
アニメーション制作:Production I.G
原作イラスト:竹岡美穂
監督:多田俊介
構成・脚本:山田由香
キャラクターデザイン:松本 圭太
音楽:伊藤 真澄

【CAST】
天野遠子:花澤香菜
井上心葉:入野自由
琴吹ななせ:水樹奈々
櫻井流人:宮野真守
芥川一詩:小野大輔
姫倉麻貴:伊藤静
竹田千愛:豊崎愛生
森ちゃん:下田麻美



【関連リンク】
『劇場版“文学少女”』公式サイト:http://www.bungakushoujo.jp

©2009 Mizuki Nomura / PUBLISHED BY ENTERBRAIN, INC. / “文学少女”製作委員会
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